Q.地中熱ヒートポンプ冷暖房システムについて

<北海道石狩郡当別町・MKさん>


 はじめまして。札幌市近郊で一戸建て住宅を新築予定している者です。一般住宅用の地中熱ヒートポンプ冷暖房システムについての質問をさせてください。
 住宅は、高気密・高断熱で冬暖かく、かつ環境にやさしい家に住みたいと考え、いろいろ情報を集めていましたところ、冷暖房システムの中に地中熱を利用したものがあることを知りました。地中熱を利用して冷暖房や給湯を行うことから、大気中に二酸化炭素等を放出することのないクリーンなシステムである印象を受けましたが、まだコストが高いなどの理由で一般住宅のシステムとしては浸透していない感があります。

そこで、
1. 同システムの中で、採熱管の埋設深度が通常60〜100メートル必要とされているのを10〜20メートルに抑えて掘削費用を抑えたもの、あるいは基礎杭に採熱管を組み込んだものなどがあるが、性能上の変化はないのか。
2. システム全体のランニングコスト、採熱管などの対応年数はどの程度であるのか。
3. 地震などによる耐久性には問題がないのか。

以上の疑問がでてきました。どうぞ、ご教授くださいますようお願いいたします。




A.アドバイスいたします

會澤高圧コンクリート(株)札幌支社
電話:011(818)8211
ホームページ:http://www.aizawa-group.co.jp/

Q-1
 同システムの中で、採熱管の埋設深度が通常60〜100メートル必要とされているのを10〜20メートルに抑えて掘削費用を抑えたもの、あるいは基礎杭に採熱管を組み込んだものなどがあるが、性能上の変化はないのか。

A-1
 一般的な戸建住宅で、100〜150メートルのボアホール方式の場合、U字形採熱管1本が必要とされています。これは、地温の高い深部での採熱(冷房では放熱)をするため、採熱管の配管延長距離が短くても必要な熱量を得ることができます。また、10〜20メートルのボアホール方式および基礎杭利用方式は、地温の低い浅部での採熱ですので、同性能を得るために本数で必要配管延長距離を確保することになります。
 例として、軟弱地盤に建てられる戸建住宅では、平均30本程度の基礎杭が必要とされます。仮に、地盤条件から10メートル/本の基礎杭とすると、総延長300メートル(10メートル/本×30本)で、採熱管の総延長も300メートルが可能になります。したがって、戸建住宅ではボアホール方式と基礎杭方式との性能上の優劣は無いとされます。
 基礎杭利用方式では工事費用面で、住宅建築のため必要とされる基礎杭を利用するので掘削費用が不要となり、圧倒的に有利となります。最近では、採熱管が事前内蔵された商品で、基礎杭兼用採熱管(エナジーパイル)が採用されてきています。
 また、地下水流の有無および土質等により、採熱量が大きく変化することの考慮も必要です。

Q-2
 システム全体のランニングコスト、採熱管などの対応年数はどの程度であるのか。

A-2-1
 ランニングコストについては、建物の熱負荷特性、地中熱交換器の特性を含むシステム効率などで変化するので、一概にお答えすることはできません。  例として、ヒートポンプの成績係数COP4.0の場合、電気エネルギー(圧縮機の定格消費電力)を1とすると、地中熱エネルギーは3となり、4の暖房エネルギーを発生させることになりますので1/4の消費エネルギーで暖房が可能となります。

A-2-2
 採熱管の耐用年数は管材の材質により変わりますが、通常用いられているポリブテンパイプや高密度架橋ポリエチレンパイプでは、10℃下での強度低下は106時間後(1000000時間=約115年後)で7%程度ですので耐久性は事実上全く問題なしと考えられます。

Q-3
 地震などによる耐久性には問題がないのか。

A-3
 採熱管を設置・内蔵することによる基礎杭としての機能低下については、実験により問題が無いことを確認しております。基礎杭が地震により破損された場合は、採熱管の破損も起きますが、その場合は建物自体の崩壊等のもっと大きな問題が生じているため採熱管のダメージは特別な問題とは考えなくても良いと思います。




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