何時も興味深く、閲覧させていただいております。見れば見るほど不安になりますが、首題の件につき、一つご教示いただけないでしょうか。
とある不動産(自社設計基準あり)と請負契約を結んでおりますが、その業者のホームページには「住宅評価制度を標準仕様にしている」とのことでありましたので、住宅性能表示制度の利用を要求しております。しかしながら、性能表示による手続きとして、下記の申し出がありました。
1)設計性能評価申請をする場合、建築確認申請図の他にいろいろと作成する図面書類が必要になり、図面・書類の作成期間及び費用がかかってきます。
2)標準(追加費用なし)で作成します図面(建築確認申請図)でも性能評価申請を受け付けていただけるとのことですが、確認図面による性能評価審査の場合、評価が最低ランクの1や2となってしまうそうです。
3)設計性能評価申請にかかる期間について書類作成の期間は取得希望の評価点によって変わってきますが、0〜3週間ほど。設計性能評価申請期間は1〜2週間ほどかかりそうです。
との返答でありました。
こちらのプランは、木造在来工法、37坪の土地(風致地区)に対し、2階建て建坪25坪程度、ロフト、吹き抜けありの若干ながら工夫を加えた自由設計のものであります。
特段、どの様な図面まで用意しなければ良いのか判りませんが、やはり先方の言うとおり、上記3点を見込む費用と時間を考えねばならないのでしょうか。先方の話であると、本来こちらに提示しなければならない完成図書類・図面一式以外に必要な書類が多々あるとのことでありました(構造計算については2階ながら3階建ての標準金額の1/3程度(10万円)でお願いすることにしております)。
常識的には「本来、唱われた性能を満たしているかどうかを判断するためのもの」。こちらが要望するものは、その通信簿の効果であり、性能評価により実質の補償を確約してもらうために、性能評価制度の利用を考えていましたが、住宅減税の取得制限(竣工日の制限)もあり、躊躇しております。
以上、多少長くなりましたが、住宅評価制度の利用に関する制約事項としてご教示頂きたく、お願い致します。
住宅性能表示には「自己性能表示」と言って、施工者の責任で施工する性能を表示する方法と、第三者による「機関性能表示」の二通りの性能表示があります。「自己性能表示」とは施工者の責任で、施工物件の性能を自己表示するもので、この場合は、契約した物件の性能を施工者自らの責任で表示し、お金も期間もかかりません。一方、第三者による「機関性能表示」は、「自己性能表示」が正当なものかどうかを、第三者機関によって評価して戴く方法で、通常の図面や仕様書の他に、第三者が、性能評価するための図面の作成が必要で、その図面作成に期間と費用がかかります。また、その図面審査や現場審査にも費用がかかり、当然、そのための費用がかかります。仮に無料といっても諸経費や管理費などと形を変えて結局は建主が払うことになります。
性能表示は、
1. 構造の安全に関するものが3段階で評価されますが、これは確認申請が通り、建築基準法をクリアーした時点で最低等級の等級1となります。しかし、構造の安全に関する等級は最低等級1であっても、500年に一度の大震災でも倒壊しない強度がある事になっております。
2. 火災の安全に関することについては、4段階になっており、火災時の火災報知器の作動状況(各部屋に火災報知器が付き、火災の際は全館に火災を報知する装置が装備されたものが最高等級の等級4となります。これも今まで通りに確認申請が受理できた仕様が最低等級で、必要最低限の火災時の対応はなされております。
3. 劣化維持に関するものついてですが、確認申請が受理された仕様が最低の1等級で、30年毎に大規模改修が必要な仕様です。2等級は60年毎に大規模改修が、最高等級の3等級は75年から90年毎に対規模改修が必要とする仕様となり、この等級は確認申請が受理されて仕様では30年ですので、最低2等級以上の仕様が望ましいと思いますが、当然ながら施工に費用がかかります。
4. 維持管理に関するものと言う項目がありますが、これは3段階で給水、排水管などが劣化した場合、取り替えやすいようになっている仕様です。点検口や配管をコンクリートに埋めないなどの仕様が高等級となります。むしろ、劣化しない配管設備を施工する方が効果的と考えますが性能表示では、取り替えやすさが基準となっています。
5. 温熱環境ですが、4段階になっており、確認申請どおりのものは単に断熱材が入ったものが最低1等級、昭和55年に施行された省エネ規準をクリアーしたものが2等級、平成7年に施行された新省エネ基準をクリアーしたものが、3等級でこれまでは、冬の暖房省エネを目的にしたものです。最高4等級は冬の暖房省エネと夏の冷房省エネの双方の性能を持ったもとなります。
6. 空気環境(シックハウス対策など4段階)
7. 光、視環境(採光面積)
8. 音環境(サッシの防音3段階)
9. 高齢者への配慮に関すること(5段階)と9項目の住宅性能に等級数を入れ(光、視力環境は最高窓の量の数値を記入)表示します。
しかし、必ずしも最高等級ばかりが、建主にとって有利だと言い切れない項目もあります。また、お金をかけて第三者による「機関性能表示」を行なって、完了証明書まで交付されても、そこに記載された性能を保障担保される訳ではありません。図面に記載されたとおりに施工された事を証明されるだけですが、この第三者による「機関性能表示」を行なった家で後日、紛争(紛争が起きる事が前提)が発生した場合、各地域に存在する弁護士会に設置された住宅紛争処理センターで、極めて安価に紛争処理が出来る事になっております。
信頼のおける施工業者ならお金のかからない「自己性能表示」(この場合紛争処理センターは活用できず紛争を起さない事が前提となりやすい)でも出来上がる家の性能をしっかり知っておく事が前提ですので、どちらかを選択するのは発注する施工業者の信頼度で決めるべきと思われます。