Q.建築家・設計事務所の選び方は?

<佐賀県小城郡・KTさん(主 婦・37才)>


 現在、家を新築しようと計画中です。まず、メーカー等の展示場などいろいろ見ましたが、オリジナル性を求めて、設計事務所に依頼することにしたいと思っています。2つの設計事務所に1回だけ、お会いしました。しかし、どちらがいいのかわかりません。設計事務所を選ぶポイント等ありましたら教えて下さい。(近日中にまた、それぞれの設計事務所の方と会います。)
 また、設計事務所との契約等について注意すべき点などがありましたら教えて下さい。また、設計事務所と施主の間でのよく頻発するトラブルになりやすい事例等も教えて下さい。
 よろしくお願い致します。




A.「建築家の選び方・頼み方」

リプラン編集部より

 建築家の仕事は主に設計・監理業務です。建主から依頼を受け、建物を設計し、工事が始まると建主の代理人として設計通りに工事が行われているかどうかをチェックする役割を担います。そのほか、工事業者の選定や融資制度、暮らし方や住宅の手入れからインテリアコーディネートまで、住宅にかかわるあらゆることについて相談に乗ってくれます。
 
●建築家をどうやって選ぶ?
 せっかく建築家に頼むのですからできれば自分と家族の好み・個性にマッチした建築家を選びたいものです。その判断材料を与えてくれるのが、住宅雑誌です。住宅専門誌では、作品を紹介するだけではなく、設計主旨を建築家自身が解説しているものもありますので、それを読めば考え方がある程度わかると思います。
 雑誌を見るときは、最初は自分がどんな住宅が好きかを考えながらページをめくってみてはいかがでしょう。写真の雰囲気や外観の形、インテリアの色使いなどを感じながら、建築家の名前や細かなデータなどはあまり気にせず、何となく気に入ったページに印をつけておきます。自分の個性に合った建築家を探す前に、自分の個性・好みを意識しなければなりません。初めから「こんな家を」と細部まで思い描く必要はないかもしれませんが、例えば、構造は木造か、鉄筋コンクリートか、ブロックか、ツーバイフォーか、あるいは洋風か、和風か、レトロなデザインがいいか、前衛的なものが好きか、ということくらいは雑誌を見ながらでも、考えたほうが選びやすいでしょう。

 さて、こうして集めた情報を基に何人かの建築家を選んで見ましょう。たくさん選ぶ必要はありません。2〜3人か、せいぜい数人程度で十分です。候補を決めたら、まず連絡を取ってみましょう。電話で「自宅を計画しているのですが、相談に乗っていただけませんか」と言えば、非常に忙しいという人でも邪険に断わる人はまずいないと思います。
 その上で、自宅に来てもらったり、事務所を訪ねてみます。時間を取って、今まで手がけた作品や住宅設計に対する考え方を聞いて下さい。それから、ぜひ実行していただきたいのは、過去に設計した住宅を実際に見てみることです。できれば、そこの建主の話も聞いてみましょう。住み心地や使い勝手などはそこに住んでいる人が最もよくわかります。
 親切な人なら、その建築家の人柄や、建主の要望に対する対応の善し悪し、設計料のことも聞けるかもしれません。実際に話を聞いたり、作品に触れたり、評判を聞くうちに、どの建築家が自分の住む住宅の設計者にふさわしいかがだんだんわかってくるでしょう。
 候補として選んだ建築家の全部について同じことをする必要はありません。候補にあらかじめ優先順位を決めておいて、一番から順に進め、「この人なら」という建築家を見つけたら、そこから後は必要なくなります。
 その建築家と打ち合わせに入り、納得できたら契約すればいいのです。場合によっては結局契約には至らないということもあるでしょう。そうしたら、また次の建築家に声をかければいいことです。
 この先25年、30年とローンを払い続けるのですから、労を惜しむべきではないでしょう。少しでも満足度の高い住宅を得たくて建築家を探すのですから、さらに言えば、設計料を払って建築家に頼むのですから、十分に時間と手間をかけて家づくりを楽しんでほしいものです。

   建築家との家づくりを進める前に、仕事を頼む際の注意事項を、簡単にまとめておきましょう。
 まず、契約です。最近ではほとんどの設計事務所で契約書を用意しています。わからないところ、曖昧なところは遠慮せずに質問し、必要ならばその回答を明文化して契約書に追加してもらいましょう。中でも十分確認しておきたいのは、設計・監理報酬と期限、監理の頻度などです。報酬は言うまでもなく、最も大切な事項ですが、例えば途中で計画をやむなく中止した場合や、重大な設計変更が生じた場合の報酬の計算方法も、事前に話し合っておいた方が後々のトラブルを未然に防ぐことができます。<設計の報酬>は、建築界では常に議論のマトです。計算方法はいろいろあります。一般には「工事費の10%」というような料率制が多く用いられています。建主にも理解しやすいからでしょう。
 期限については前章と矛盾するように感じるかもしれませんが、いつごろ着工するか、いつごろ完成するかということは、新築に伴うあらゆることに影響しますから、建築家との間で十分話し合っておく必要があります。
 監理の頻度も重要事項の一つです。いくら優れた設計でも、図面通りに施工されなければ文字通り絵に描いた餅に終わってしまいます。工事が始まったらひと月に何回現場を見てもらえるか、工事のどの段階でどういうチェックをするのか、工程の中で建築家が立ち合うのはどれか、といったことを確かめておきましょう。契約というものは双方が十分納得することが一番大切です。話し合った事柄については契約書でなくても「打合せ書」のような形で文書に残しておきたいもの。
 次に、自分の住宅に対する考え方をどんな言葉でもいいですから、できる限り建築家に伝えましょう。絵の得意な人ならスケッチを描いてみるのもいいと思います。あらゆる手段で自分の希望を伝えることです。優れた建築家はちょっとしたヒントで頼む側のニーズを的確に把握してくれることもあります。
 3つ目に、思いついたアイデアはどんな小さなことでも話してみることです。建築家はもともと建築が好きですから、その好奇心を刺激することによって新たなアイデアが生まれるかもしれません。建築家の方から対案を出してくるようになればしめたもの。その建築家が自分の住宅の設計にのめり込んでいる証拠です。そういう設計は、必ずや密度の濃い作品になるでしょう

<リプラン特別号・北のくらしデザインします.3より抜粋>




A.設計者の選び方について

建築家の団体・日本建築家協会北海道支部
住宅部会会長・染谷哲行(アルクム計画工房011-281-1515・主宰)

●一番のポイントは、相性。

 まず設計事務所の役割を要約すると、社会的な立場で建て主(依頼者)の要求を満たすことだと思います。
 社会的な立場とは、法的・技術的・経済的な諸問題を解決することはもちろん、環境的・景観的・さらに近隣との調和という問題まで入ってきます。まずそれらの諸問題に対して、設計事務所と建て主の考え方が合致するかどうかが、一番のポイントでもあり、トラブルにならない秘訣だと思います。
 それが合致すれば、あとは好みの問題なので実例を見せてもらったり、その住み手のお話を聞くことができれば判断は、容易だと思います。そのときに気を付けて欲しいのは、その建物と建て主が似合っているか、借り着のようではないか、というチェックはした方がいいと思います。建て主のオリジナル性も含んでいる建物にするのが、設計の仕事ですから。
 契約に関しては、各設計事務所の考え方はあると思いますが、一般には成功報酬ではないとお考えください。書面契約以前でも作業などを依頼すれば、口頭契約が成立する場合があります。そこがハウスメーカーとの一番大きな違いですし、建て主にとっても設計事務所が近寄りにくい立場になっている所でしょうが、きちんと話し合って、信頼関係を作ることが、家づくりの基本ですのでがんばってください。




閉じる