Q.基礎と換気の工法について。

<愛知県名古屋市・TTさん(会社員・38歳・男)>


 新築を検討中の者です。現在、最終候補に残っている建築メーカーの、特に基礎と換気の工法について、質問させてください。
 そのメーカーは、木造在来の外張り断熱工法で、断熱材は小屋裏・壁・基礎とも高性能フェノールフォームです。基礎内は、立ち上がり部分の内張りになります。換気は第1種の全熱交換で、小屋裏と1〜2階の3層換気です。そのうちの小屋裏に設置の全熱交換システムは、小屋裏内の空気を本体で室内吸気し、ダクトで外部に吸排気。熱交換後の室内排気を床下までダクトで運び、床下からは壁内に設けられた内部通気層(構造用合板と石膏ボードの間)を通って、小屋裏に回ってくるという換気通路です。

質問したいのは・・・、
1)基礎内は、新築後のおおむね1年ぐらいは、新しいコンクリートから湿気が多く放出されると聞きますが、高性能フェノールフォームは、湿気には弱いのではないでしょうか?
2)全熱交換は、湿気も交換するそうですが、基礎と小屋裏内も全熱交換で回すと、湿気がずっと交換されて、外部に排気されず、湿度が下がらないのではないでしょうか?
3)壁は、外壁材→透湿防水シート→胴縁&外壁通気層→断熱材→構造用合板→角柱&内部通気層→石膏ボードの順で構成され、気密シートがありませんが、気密性は保てるのでしょうか?
4)全熱交換システムのメーカーに問い合わせたところ、高性能フィルターを使用しているので、きっちり交換していれば、エレメントはメンテナンスフリーとのことでしたが、そんなことはあり得るのでしょうか?




A.アドバイスいたします

住まいを科学する技術集団・新住協メンバー
須藤建設(株)
副社長 須藤芳巳
ホームページ:http://www.sudo-con.co.jp/
Eメール:sudohome@sudo-con.co.jp

 今回の換気システムをシンプルでわかりやすく捉えると、「家全体をサーキュレーター(この頃は使われなくなったが、室内において天井の暖かい空気を下方に戻すファン)のようなサイクルファンで館内空気を循環させるモード」「小屋裏に設置した熱交換換気扇で給排気するモード」を併用してセントラル換気を行う工法になります。
 自動車にも、「車内循環モード」と「外気導入モード」がありますが、この場合の前者をサイクルファン、外気導入部分を熱交換換気と捉えてもわかりやすいと思います。

質問1 
 ご質問のとおり、コンクリートが乾くのは半年から1年かかります。ここで基礎内の湿気対策で大切なことは外部に放出することです。今回、基礎内の湿気を小屋裏の熱交換換気システムで対応できることを確認してください。基礎内の換気が確実に行われるならば、フェノールフォームは支障ないと思われます。

  質問2
 全熱換気扇の利点は、内部の湿った暖かい空気と外部の乾燥した冷たい空気を繊維状の薄い膜を通して熱交換すると共に、湿気も交換できることにありますが、欠点は室内の湿った暖かい空気が熱交換のとき冷やされて水になり、エレメントにカビが生えたりすることです。外気が持てる湿気は交換し、後は外部に排気されますので、湿気が排出されないということはありません。

質問3
 気密シートは断熱材の内部側に施工します。したがって今回の場合、外断熱工法なので構造用合板の外側に気密シートを張り、それから断熱材を施工します。気密シートがないということはあり得ません。

質問4
 通常、高性能フィルターは室内側についています。外部空気のほうには付いていません。性能の高いフィルターほどメンテナンス・交換が必要になります。  いずれにしても、自動車のエアークリーナーを見てもメンテナンスは必要と思います。カタログにメンテナンスについて記載があると思いますので、確認してください。

・住宅性能の基本的な考え方
住宅は精密工場ではないので、マニアックな機械に頼るシステムは必要ないと思います。機械システムの性能数値はベストの状態の場合であって、使用していく中で起きるフィルターの目詰まりなどの場合を想定していません。
 住宅は、
1. 自然または人力を基本として、機械は補助として考える。自動車のハイブリットカーのような考え方です。
2. オーナーがメンテナンスを簡単にできることが基本。
 高性能より、アバウトでシンプルなもののほうが、丈夫で長持ち、ローコストで使いやすく、さまざまな変化に対応ができると思います。
 換気について言えば、温かい空気は比重が軽くなり上昇します。煙突現象です。このことを利用するプランを考え、窓・内部ドアを天井までの高さにするか欄間を設け、室内に暑い空気が貯まらないようにし、さらには建物を縦使いし、空気の流れをつくる工夫が必要です。建物の外構計画にしても、南面のほとんどをアスファルトまたはコンクリートにした場合、真夏に太陽熱を蓄熱することになり、外部を床暖するようなものです。やはり緑化し、打ち水をし、自然と人力で生活したいものです。
 北海道では高齢化と共に除雪が困難になり、外部をロードヒーテングにすることが多くなってきています。
寒冷地で高気密・高断熱の住宅の普及から省エネ化が促進される中、地球相手に外部を床暖?していることになります。ロードヒーテングにおいても同様に、必要最低限の部分以外は自然に任せ、雪が溶けるまで待ち、多少人力で対応しながら、足りない部分を機械に頼るようなハイブリットの考え方が必要と思います。基本は人間。機械は補助です。




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